“ニコニコ自作ゲームフェス2016”お勧め作品ピックアップ 第3回
パーティ共有リソースを振り分ける自由度の高いスキルセッティングや、ATBをベースにガードの概念を加えたリアルタイム性の高い戦闘システムが特徴のノンフィールドRPG。個性的なキャラクター達の掛け合いで進むイベントシーンも豊富に盛り込まれた中編作品となっている。
物語の主人公は、魔法学校の生徒や卒業生など、6人の魔法使いたち。突然“魔者”と呼ばれる異形の存在が現れるという事態に、それぞれの立場や事情で立ち向かっていく。ゲームはこの6人から最大3人を選んでパーティを編成し、次々と敵を倒しながら進行。物語の節目ごとにステージが分かれており、各ステージの最後にはボスが待ち受ける。
戦闘では敵・味方共に時間経過で溜まる“APゲージ”が満タンになった順に行動。さまざまな魔法(スキル)を駆使して戦っていく。加えて、特定キーを押している間は敵の攻撃をガードし、ダメージを軽減することが可能。ただしガード中はAPゲージが溜まらないので、敵のAPゲージを見てタイミングを計りながらガードしていくことになる。
スキルはあらかじめセットした数個を戦闘中に使える仕組み。6人の魔法使いはそれぞれ冷気・炎・黒といった先天属性を持ち、レベルアップでその属性の魔法を覚えていく。ポイントは、スキルをセットするスロットは例えば冷気使いの“リジェ”なら“冷気属性3つと白・黒属性を各1つ”など、自分の属性を中心としつつ別のキャラクターが覚えた魔法もセットできる構成になっていること。
さらに、一部の敵を倒したり“最大ダメージ50突破”といった各種実績を解放することで入手できる“エナジー”をスキルに振り分けて、スキルを強化することが可能。この強化はノーコストでエナジーに還元し、何度でも振り分けをやり直せる。敵の弱点属性といった状況に応じて、パーティメンバーの編成にスキル構成、エナジーを誰のどのスキルに注ぎ込むか……といった試行錯誤を存分に楽しめる仕組みだ。
強力な攻撃を繰り出してくるボスとの戦いではガードが特に重要エナジーを振り分けてスキルを強化。スキルによって威力や攻撃回数、効果範囲などさまざまな面が強化されるその一方で、買い物や消費アイテムの概念はなく、装備はアクセサリが1枠だけと、ノンフィールドであることと合わせて力を入れる所と省略する所のメリハリが効いており、プレイの感触は濃厚。コンシューマー携帯機を意識したような見やすく明解なワイド表示のUIや、画面に表示される操作ガイドのボタン名まで変更可能な操作コンフィグなど、ユーザビリティへの配慮も目を惹く。
こうした作りにより、バトルとキャラクターカスタマイズに集中して取り組めるのが本作の醍醐味。特にボス戦やステージ中盤に発生する連続バトルでは、特殊な攻撃やトリッキーな行動を仕掛けてくる敵も多い。しっかりと戦術を考え、その上で戦線が崩されないよう的確なガードも欠かせないという、まさに手に汗握る戦いを堪能できる。なお、敵に勝てない場合は過去のステージを再プレイして経験値やエナジーを稼ぐことも可能だ。
ゲーム中にガイド表示されるボタン名まで変更できるキーボード・ゲームパッド操作のコンフィグ。ほかにもウィンドウサイズの拡大などコンフィグが充実している術者に一定ダメージを与えるまで動けなくなる“拘束”など、さまざまな特殊行動を仕掛けてくる強敵も出現ストーリーはステージの合間や、ステージ進行中に会話シーンが挟まることで展開。緊迫した状況の中でも、賑やかな掛け合いが場を和ませてくれる。一方で、異なる進路へ進み、互いに複雑な想いを抱えながらの再会となった卒業生達の関係や、魔者という存在に隠された真実など、ビターな展開も待ち受ける。それぞれの決意や仲間への想いが描かれるシナリオも、本作の大きな見どころとなっている。
また、こうしてシナリオ上で描かれるキャラクター性が、スキルスロットの構成やキャラクターごとに豊富に用意されたパッシブスキルなどでも表現され、欠点も含めキャラクターに愛着が沸いてくる。パーティの別メンバーのMPを補給する“リンケージ”コマンドや、リンケージした相手に特殊効果を付与するパッシブスキルなどもあり、仲間同士の連携を戦闘でも実感できるのが面白い。システムとシナリオが絡み合ってキャラクター達の戦いの日々を鮮やかに描き出す、和製RPGらしい魅力が詰まった良作だ。
ときにかしましく、ときにシリアスに。戦いの日々を精一杯生き抜く魔法使い達が描かれる